その日、会社では菅総理大臣の「外国人からの献金問題」を取り上げていた国会中継をTVで垂れ流していた。
まもなく15時になろうかという時にTVから地震緊急速報が流れた。そして大きな揺れが事務所を襲った。俺の右側に設置してあるメタルラックにはPCサーバが4台と最上段には15inchの液晶モニターが置いてあるのだが、サーバはともかく液晶モニターが倒れそうになった程の大きな揺れ。
モニターを液晶面を下にして寝かせて様子をみる。
TVではすぐに震源地と震度の発表が行われるが、その間にも大きな揺れが来た。
二度ほどマンションの外に全員で非難したりもしたが、事務所に戻ってTVを見ていると、東北地方の津波映像が流されている。
港湾のトラックやクルマが流されていたり、名取川を逆流して民家を押し流されている映像は大きな衝撃だった。
当然電車はすべて運行停止で復旧の目処が立たない。
自宅にいる子どもに電話をしても携帯は全くつながらないし、町田にいる父親にも固定電話ですらつながらない状態。
また杏林大学病院に入院中の妻にメールを送っても送信できないか、送信できても遅延のためか返信が帰って来ない。
取るものも取り敢えず帰宅しようにもタクシーが捕まらないので、たまたま車で出社していたB君に仙川駅までK氏とともに乗せてもらうことにした。
ちなみにB君は相模大野まで帰宅。K氏は吉祥寺まで帰宅予定。K氏には仙川まで行けば吉祥寺行のバスが出ていますよと教えたら、K氏も仙川までということになった。
駐車場をでると既に甲州街道は大渋滞。歩道を歩いている人も大変多い。おそらく交差点では信号が青でも歩行者が多すぎてクルマは殆ど左折できないのであろう。
17時前に出発し、なんとか裏道を探して進むも仙川駅に到着したのは19時過ぎだった。
バスは幹線道路の渋滞によるダイヤの乱れはあるものの、運行していたので吉祥寺行きにK氏と乗り込み、俺だけ杏林大学病院前で下車。この路線は渋滞もなく、ここまではスムーズに到着できた。
早速、妻の病室に行くと看護師さんが「帰宅できない面会の方はデイルームを開放しますので毛布が必要でしたら仰ってください」と言うありがたい申し出があった。
途中構内のローソンで晩飯のおにぎりでも買おうと立ち寄ったら、いくつかのカップラーメン以外はすべて売り切れだった。
長男は19時から居酒屋のバイトに入っているのは分かっていたので、どうせ暇だろうから迎えに来てもらおうかと公衆電話から居酒屋に電話をして呼び出してもらう。
しかし、電車が止まってしまったため近隣のサラリーマンが飲みに来ているらしく忙しいそうだが、なんとかバイトが終わる22時になったらクルマで迎えに来てもらうように頼んだ。
また町田の父親のところにも電話してみたら、今度はすぐに繋がり無事を確認できた。
21時で病棟は消灯。病室から追い出されてデイルームへ。
構内から出てタバコを吸ったり、構内の24時間ローソンでお茶を買ってデイルームに戻ってみると、デイルームも既に消灯してご婦人が3人ほどソファーで横になったりテーブルに突っ伏してお休みだった。
窓に向かっているカウンターに座り、iPhoneで色々情報を見ていたら、22時過ぎに京王線が一部復旧したという。
ナースステーションに寄り、自力で帰宅する旨を看護師さんに伝え徒歩で仙川駅に向かった。一応バス停にも寄ってみたが、バスが来る気配はない。
iPhoneのGoogleMapを見ながら仙川駅に向かう。しばらくすると向こうから人がぞろぞろと歩いて来る。きっと電車を降りて歩いて来る人たちだろう。中には携帯で話をしながら歩いている人もいるが、俺のiPhoneは相変わらずどこにも電話できない。
駅に着くとすぐに電車が入ってきたが、大変な混雑。なんとか身体を押しこんで調布まで。相模原線もそこそこ混んでいた。
シルバーシートに、若いママが男の赤ちゃんを抱っこし、ベビーカーを畳んだ状態で座っていた。こんな時間になってしまって可哀想だ。
周りの乗客も同じ思いだったんだろう。またああいう状況では困った人を助けたくなるんだろうか、ぐずり始めた赤ちゃんがいても誰も文句なんか言わないし、あれやこれやママに提案してあげたりしている。俺もだいぶ空いた時点でベビーカーを広げて赤ちゃんを乗せたらどうですか?と提案してあげた。
最寄り駅に着き、自宅まで歩く。
エレベーターで6階まで上がってみると、玄関ポーチに立てておいたタイヤラックが倒れて夏タイヤが玄関ドアを塞いでいた。室内の状態が心配になる。
ラックを立て、タイヤを載せて玄関に入り、リビングにいってみるとキッチンカウンターに立てかけてあったコルクボードが倒れていたり、あちこちの引き出しが開いていたりしたが、それ以外は無傷!一番心配だった液晶テレビも無事だった。そしてペットのリバティーも特に怯えた様子もなく元気だった。
リバティーに晩ご飯を与え、TVを見ながらビールを飲みほっとした。